2016-12-05

報告 2016年11月23日 市民セクター全国会議

市民セクター全国会議(認定NPO法人日本NPOセンター主催)は、2年に1度、地域、分野、セクターの枠を超えて、地域の持続可能性につながる議論をするフォーラムです。今回のテーマは、「問われる民間の力~地域と国際の視点から考えるこれからの社会」でした。


分科会5 「市民社会の担い手を広げ、育てる参加のあり方とは」


コーディネーター:川中 大輔さん(シチズンシップ共育企画 代表)
スピーカー:宮本 裕子さん(NPO法人藤沢市市民活動推進連絡会 企画業務マネージャー)
中野 圭さん(NPO法人wiz 代表理事)

社会課題を解決する担い手をどう増やしていくかが本分科会のテーマになります。コーディネーターの川中さんより、市民が能動的になるためには、「語り出す」→「学ぶ」→「つながる」→「つくる」→「決めて動く」という段階があると説明がありました。そして、宮本さんから高校生を対象にした社会参加プログラムの報告、中野さんから若者を対象にしたインターンやプログラムの報告がありました。
 藤沢市のプログラムは、東北の被災地を訪れて、ボランティア活動を行い、様々な課題に取り組む現地の高校生との交流の機会を提供しています。1)高校生が興味を持ちやすい「被災地」をテーマにする 2)企画づくりに参加させる 3)丁寧な振り返り 4)身近なロールモデルになる大学生のサポーターの存在など、高校生が参加しやすいように様々な工夫がなされていました。特に印象に残ったのは、「被災地」をテーマにしたこと。藤沢市の地域課題に関心を持ってもらいたいというのが企画側の本音。あえてそれをテーマにせず、関心の高い「被災地」をテーマに選び、プログラム終了後に藤沢市での自主的な活動が生まれることを期待していました。実際、県に政策提言をした高校生もいたということでした。
 wizは、岩手で活動をする団体です。「実践型インターンップ」では、学生を対象に地域企業へのインターンを提供するものです。1ヶ月以上の長期に渡り、学生のキャリア形成だけでなく、企業側にとっても新規事業の促進等を学生の力を活かして実現できるというメリットがあります。学生から見た魅力は、企業の社長等と一緒に企画づくりに参加するなど、主体的に関われること。
2つの事例は、参加者への丁寧なフォローを心がけていました。コーディネーターの役割を大事にしており、藤沢市の場合は高校生が接しやすいように大学生をサポーターにしていました。wizは参加者とコーディネーターが1対1の関係を築くようにしていました。ボランティアなどの社会活動に参加したいと考える市民は多くいる一方、実際に参加するのは一部にとどまっています。参加したいと考える市民のハードルが下がるように、さまざまな工夫が必要だと改めて感じました。(報告:定森)


協賛プログラム3 豊かな市民社会づくりに起業のお金を活かすには?


実施団体:NPO法人市民社会創造ファンド
基調報告:「市民社会創造ファンド15年の取り組みの中で」シニアプログラムオフィサー坂本憲治氏

2002年に日本NPOセンターの実績の一部を継承・発展するかたちで設立された。専門的なコンサルテーション機能を備えた資金仲介組織である。下記3つのプログラムで助成を行っている。
基盤強化プログラム:自主調達した資金で助成・研修を実施
特定目的プログラム:企業・個人・財団等からの目的指定寄附や助成金を原資に個々のNPOへ助成
協力プログラム:企業・個人・財団等に協力し、NPOが実施する特定の活動に助成するためのプログラム開発や公募・選考等を受託し実施。助成件数1,924件、助成総額22億4,567万円の実績を持つ。
様々な挑戦を行う中で、制度化されていない社会サービス・ニーズを推進する姿勢はNPOにとって心強い限りである。
助成業務を行う担当者の能力や資質が問われるという点は北海道NPOファンドの事務局を担う私たちにとってもまさに課題でありさらに研鑽を積まなければと心新たにしました。
15年にわたり助成プログラムを実施してきたファイザー(株)、パナソニック(株)と助成を受けたNPOの取り組み報告では、NPOからプログラムへの企業からの参加を期待するとの声がありました。(報告:北村)

協賛プログラム4 「NPOの社会責任(NSR)取組推進プロジェクト」


実施団体:社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク
コーディネーター:川北 秀人さん(IIHOE)
スピーカー:渡邉 清孝さん(特定非営利活動法人 ハンガー・フリー・ワールド 理事・事務局長)
森 建輔さん(社会♡責任あいち メンバー)
柳澤 千恵子さん(一般財団法人ダイバーシティ研究所 研究員)
長谷川 雅子さん(一般財団法人 CSOネットワーク プログラム・オフィサー)

2010年発効の組織の社会責任(SR)に関わる国際規格ISO26000のエッセンスを、NPOにおいて推進する取り組みについて、4人のスピーカーから実際の取り組みについてお話を伺いました。ハンガー・フリー・ワールドは、評価のための機関を設けるなど全社的な取り組みをしており、SR報告書というものを発行しています。社会♡責任あいちでは、2年間にわたりISO26000の勉強会を開き、導入のためのハンドブックを作成しました。ダイバーシティ研究所とCSOネットワークは、同じビルに事務所があり、共同でNSRの実践に取り組んだそうです。グループワークを行い、自団体で行っているNSRと今後どうしたいかについて話し合いました。
NSR推進のメリットとして、自団体の組織運営の見直しを図れること、寄付者や協賛者への説明責任を果たせること、社会的責任という点で企業と同じ立場に立てるため、協働の推進につながることなどが挙げられます。一方で、NSR推進にリソースを避けない小規模団体も多いと考えられ、中間支援組織の助言や勉強会の開催などが必要であると感じました。(報告:高山)

協賛プログラム5「休眠預金、ソーシャルインパクトボンドは地域の課題解決に貢献できるか?」


【実施団体】特定非営利活動法人 日本ファンドレイジング協会
スピーカー:鈴木 祐司さん(公益財団法人地域創造基金さなぶり専務理事・チーフプログラムオフィサー)
鵜尾 雅隆さん(特定非営利活動法人 日本ファンドレイジング協会 代表理事)

スピーカーの鵜尾さんから、先日衆院を通過した「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律案」に関係した制度の説明(預金者の払い戻し請求権がなくなるわけではないことなど)がなされました。それによると、毎年1,000億円ほど発生する休眠預金は、指定活用団体かあら資金分配団体に助成・貸付され、そこから民間公益団体を行う団体等に助成・貸付・出資されます。またこの資金は、ソーシャル・インパクト・ボンド(社会的インパクト債)の原資としても構想されているようです。
ソーシャルインパクトボンドに関する動きとしては、2017年に厚労省のモデル事業が始まる他、横須賀、尼崎などの実証事業や、日本財団の実証事業があります。ソーシャルインパクトボンドにおいて重要だと思われるのが、社会的インパクト評価といわれるもので、これは、単にセミナー参加者の数だけを成果とするのでなく、受講した結果どのような効果が受講者に対してあったのか、そして将来どうなるのかなどを短期的、長期的な視点から評価しようとするものです。
2016年からすでに社会的インパクト評価の普及に向けた取組が行われており、「社会的インパクト評価イニシアチブ」が設立され、事業者やシンクタンク、研究者など幅広い分野から参加しています。
鈴木祐司さんからは、地域課題解決に積極的に取り組むコミュニティ財団についての発表が為されました。申請を待つだけでなく、地域の課題を見つけ、それに対して助成や融資を行う姿勢の重要性について述べられました。
休眠預金活用が実際に始まるのかははっきりとは分かりませんでしたが、民間公益活動と法案に銘打たれていることからも、その動向を一層注視しなければならないと感じました。(報告:高山)