2017-04-10

(寄稿)「人手不足と言われる中で」

北海道NPOサポートセンター事務局長 佐藤 隆

数年前、NHKテレビで米国ピッツバーグのNPOの取組を紹介していました。ピッツバーグはトランプ大統領の支持層が多いラストベルト(錆びついた工業地帯)にあり、かっては鉄鋼業の中心でした。日本をはじめとするアジアの鉄鋼業に負け失業者が街にあふれていた都市です。紹介されていたNPOは、会社が求める「具体的なスキルを持つ労働者」を半年くらいかけて無料で養成しマッチングするものでした。就職した人が1年以上その会社に在職した時点で、年収の半年分に相当する報酬をNPOが受け取るものです。もちろん企業からの報酬だけでNPOが成り立っているはずはないでしょう。寄附で支えられているはずです。スウェーデンでは公務員がこのようなマンツーマン型の支援を行っています。

日本では公教育を終えた人が、企業の外部で有効な職業的知識や技能を身に着けることは容易なことではありません。生活保護的な給付を受けながら職業訓練を受けることが原則的にできないからです。非正規は不安定な雇用のまま留め置かれることになります。希望を託すのは運のみということでしょうか。
全国で39才未満(政府統計上の若者)の無業者は200万人と推定されています。多くは親世代との同居でしのいでいるのでしょう。空知地方で生活困窮者支援を行っているあるNPOの責任者によると、旧産炭地では40歳代、50歳代でも親と同居している人たちの多さに驚くそうです。様々な社会的困難に遭遇して親元で暮らさざる得ない現実があるわけです。無業者という荒んだ階層分断の中で、ゆったりとした生活給付と職業訓練は、推定200万人のひとに是非とも必要なはずです。
日本では教育に費やされる対GDP比率は、OECD諸国の中で最低であることは、よく知られるところです。大学卒で就職した時点で奨学金借金が3~400万円もある状態で、もしその会社を辞めたら・・・・。再出発の職業訓練もままなりません。

閑話休題、われわれ65才以上のものは、平均10万時間の使用時間があるといわれています。この時間は自分が働いてきた勤労時間にイコールとのこと。
NPO創生時には、事業型NPOとボランティア型NPOにNPOを分けて論じられてきたものですが、上記のような時代の変化の中で事業型NPOに大勢の65歳以上のパワーボランティアが集り、無業者と言われる生活困難者の人をひきつけ、居場所や仕事を創りだす新たな時代のNPOが、都市でも過疎地でも必要とされているはず。
 新事業年度に向けた抱負のようなものです。